気候変動やさまざまな社会問題が地球規模で起こるなか、これからの時代はあらゆるジャンルで「サステナブル(持続可能な)」という視点が欠かせない。この先も持続して豊かに暮らせる社会をつくるために、どのような課題を解決していけばいいのか。愛知県名古屋市にある「豊島」は、オーガニックコットンの普及や、廃棄予定の食材を染料にしたアイテムを展開するなど、ファッション界からサステナブルを発信している商社。同社の執行役員で、営業企画室室長の溝口量久さんに話を聞いた。(※出典「東海の大学力2021」)
●食品ロスに一石を投じる「フードテキスタイル」
ファッションの世界は、その華やかなイメージと裏腹に、環境負荷が大きい業界だと言われる。
1841年創業の商社「豊島」は、そんな業界において先駆的な取り組みを進めてきた。木材パルプが原料の素材「テンセル」を取り扱ったのが、今から約30年前。また、15年前に始めた、オーガニックコットンを少しずつ広く浸透させる「オーガビッツ」プロジェクトは、110余りのブランドが参加するまでになっている。
同プロジェクトの発起人でもある溝口量久さんは、「ファッションでできることは主に二つある」と話す。
「まず、サステナブルな素材の商品を選ぶこと。そして、商品を通して社会貢献活動に参加すること。我々商社の役割は、これらを楽しみながらできる“器”を、取引先メーカーやブランドと一緒に作ることです」
その一つが2015年スタートの「フードテキスタイル」だ。フードロスが社会問題となる中で注目を集めている。通常なら捨てられる規格外の食材やカット野菜の切れ端、コーヒーやお茶の出し殻などを、食品関連企業や農園から買い取り、染料に使用。テキスタイルのほか、衣類や小物などのオリジナル商品も展開し、人気ブランドとのコラボも行っている。
「問題が解決できるわけではありませんが、廃棄食材が生まれ変わる道を作ることで、考える機会にできればと思っています」