コロナ禍のいま、多くの業界が変革に迫られている。医療分野も例外ではない。受診控えで経営が悪化する病院もあるなか、ポストコロナの医療はどう変わるのか。AERA 2020年8月24日号で、メドピアCEO・石見陽医師が語った。
【医師1335人緊急アンケート】いま、医療現場で何がおこっているのか?
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新型コロナウイルスの影響で人とリアルに会うことが難しくなり、医療においてもさまざまな関係性が変わり始めました。特に、初診を含むオンライン診療が特例で解禁され、医療者と国民がつながったことは、大きな変化だと思います。すべてがオンラインになるとは思いませんが、少なくともオンラインでのコミュニケーションは、これまでの診療を補完するものになるはずです。
一方で、多くの科で受診控えが報告され、今後、一部の病院やクリニックの経営が難しくなることは否めません。患者が減り、経済面でも厳しくなることは、医療に誇りを持ち働く医師にとって少なからずショックです。今後、医療職を選ぶ優秀な人材が減るという懸念も持っています。
けれども、医師側の発想の転換も求められていると思います。「腕さえよければ」「頑張っていれば」患者が来る、という時代は終わりました。日ごろの努力に加え、地域や患者に自分たちを知ってもらう広報活動も問われてきます。
こうした流れの中で、医療はセルフケアの領域とつながり、たとえば、かかりつけ医が日常的な健康相談を網羅するなど、生活の中に入ってくるのでは、と考えています。医療がサービス業に近づく時代が、予想以上に早くやってくるかもしれません。
長期的にみれば、いま、日本の医療は「保険診療だけで成り立つのか」という重要な命題に向き合っていると思います。そこに新しいチャレンジや解釈が生まれ、活躍の幅が広がれば、未来の後輩たちに道を示すことにもなると考えています。
(編集部・小長光哲郎、ライター・井上有紀子)
※AERA 2020年8月24日号