帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
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※写真はイメージです (GettyImages)
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 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「見えないストレス」について。

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【コロナ】ポイント
(1)原因がはっきりしないストレスもある
(2)コロナは見えないストレスになっている
(3)心をときめかせてストレスの解消をしよう

 最近、周りに不機嫌な人が増えていませんか。ちょっとしたことで怒ってしまったり、イライラしたり。それはみんなが、コロナのせいでストレスを抱えるようになっているからだと思います。

 ストレスは「圧迫」とか「緊張」とかを意味する言葉で、医学的には生体内の歪(ゆが)みの状態をあらわしています。体の外から加えられる有害因子(作因)と、それによって生じる防衛反応の両方をストレスというのです。昔は作因をストレッサー、反応をストレスと呼んでいましたが、いまは両方ともストレスです。

 この有害因子、つまりストレスの原因は、はっきりしているものと、そうでないものがあります。災害や事故、家族間の不和(ケンカ)などは、わかりやすいですね。それによって、不安やイライラ、気分の落ち込み、不眠といったストレス反応が起きた場合、本人も周りの人もストレスのせいだと判断できます。

 ところが、原因がはっきりしない「見えないストレス」もあるのです。世の中全体が最近、コロナに対する不安に怯(おび)えている状態は見えないストレスを引き起こしているのではないでしょうか。コロナによる生活様式の変化も十分にストレスになるのです。

 ストレスという概念はカナダの生理学者、ハンス・セリエ(1907~82)が提唱しました。ストレスに伴う心身の機能変化を下垂体・副腎系の反応を軸に説明したのです。この下垂体が副腎皮質を刺激し、ホルモンが分泌される反応には三つのステージがあります。

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