8月14日、初期の腎細胞がんを患ったことを明らかにした、お笑いコンビ「おぎやはぎ」の小木博明さん(49)。21日には相方の矢作兼さん(48)が、小木さんの手術が無事に終わり、がんの摘出が完了したことをラジオで伝えた。
小木さんが受けたのは、主治医が遠隔操作する手術支援ロボットによる手術だとされる。2012年に前立腺がんに健康保険が適用されて以来、腎がん、大腸がん、子宮体がんなど、多くのがん手術に用いられている。
手術支援ロボットに詳しい神戸大学大学院医学系研究科腎泌尿器科学分野の藤澤正人教授は、そのメリットを「立体的な画面で、緻密(ちみつ)な操作ができる」と話す。おなかを大きく開ける必要がないため、患者への負担も小さい。これまで行われてきた開腹手術や小型のカメラを使った腹腔(ふくくう)鏡手術の“いいとこ取り”をしたものだといえるだろう。
これまで手術支援ロボットは、米国のインテュイティブサージカル社が製造した「ダビンチ」が圧倒的なシェアを占めていた。そこに国産初の手術支援ロボット「hinotori」が登場した。
産業用ロボットの大手メーカー・川崎重工と、医療機器メーカーのシスメックスの両社が設立したメディカロイド社が開発し、8月7日に製造販売の承認を取得した。まずは前立腺がんや腎がんなどの泌尿器科の領域で始め、その後、婦人科や消化器科の領域への拡大を目指す。
気になるのは、hinotoriという名称。漫画家の手塚治虫氏がライフワークとして描いた漫画から取ったという。作品で扱うテーマはまさに「生命」だ。
「最初から、『火の鳥』を名前に使いたいとの構想があった。“人に仕え、人を支えるロボット”という考え方に手塚プロダクションから賛同いただき、採用が実現した」(メディカロイド社)
開発が始まったのが15年。同社と共に手術支援ロボットの開発にあたってきた藤澤教授は、「産業用ロボットの高い技術を、医療機器に応用できた」と評価する。