ライバルは読売新聞!を謳う本誌「週刊朝日新聞」に、受託収賄などの罪で服役中の鈴木宗男元衆院議員(63)から「手紙」が届いた。5月24日付の読売新聞に掲載された「論点」にもの申す、というのだ。

「論点」には、元駐ロシア大使の丹波実氏(73)が、北方領土問題について寄稿している。表題は「4島返還要求 正義のため」。東日本大震災以降も北方四島の主権を強固に主張するロシアに対し、「日本が4島返還を求めるのは歴史を通じて正義を実現するため」だと断じる内容だ。

 現在、"民間刑務所"と呼ばれる喜連川社会復帰促進センター(栃木県)で「配膳係」の仕事をしている宗男氏だが、かねて「2島先行返還」論者として知られる立場だけに、さすがに黙っていられなかったのだろう。手紙はこう始まる。

〈丹波氏にお聞きしたい。日本の正義として原理原則を主張して、4島返還が実現するのかと。よく「日ソ不可侵条約があった。それを破ったソ連(現ロシア)はケシカラン」という主張が聞かれる。しかし、それを言うとロシアは「日・独・伊三国軍事同盟で日本は独を応援した。我が国はどんな目にあったか」となる。日本が日本の認識のみで正義の主張をすると、ロシアはロシアの認識で主張する。これでは生産性のない不毛な議論となる〉

〈外交には相手がある。(中略)どうしたら北方4島が還ってくるか、現実的解決論で外交交渉をするしかないのである〉

 丹波氏は論文の中で、これまで俎上に載った「2島返還論」「2・5島論」「3・5島論」「面積折半論」などを「バナナのたたき売りのような外交」と一刀両断。あたかも宗男氏を名指しで批判するかのような書きっぷりだが、ここにもカチンときたのだろう。

〈よく「鈴木は2島先行返還論だ」と言われたが、はっきりしておきたい。それは、私は4島の旗を一度も降ろしたことはないということだ。戦後米国は沖縄、奄美諸島、小笠原諸島を占拠した。戦後8年で奄美、23年で小笠原、そして27年で沖縄返還と、時間差があった。この歴史の例にもならい、4島を還してもらうのはどうしたら早道なのかを私は考えた。(中略)最初に日本の正義として4島返還を訴える空想的返還論では、入り口で止まり、出口が見えないのである〉

 丹波氏は論文を「今は忍耐と我慢の時代」と締めくくっている。だが、宗男氏はこう切り捨てるのだ。

〈元島民は70・80・90代で、人生の時間は限られている。先祖の墓を残し、生まれ故郷を離れざるを得なかった元島民の気持ちを思うとき、丹波氏の発言は人間味に欠けており心がない〉

 獄中にしてこの"怪気炎"、さすがの迫力です。 (本誌・鈴木毅)


週刊朝日