政府が2015年から取り組んだ「ゆう活」(夏の生活スタイル変革)はちっとも浸透しなかったが、別の「ゆう活」は100年以上も前から浸透している。それは旅行貯金や風景印収集といった“郵便局をめぐる活動”で、旅好きの人、貸切バスの運転士、ガイド、アマチュア無線愛好家などに浸透しているという。鉄道と郵便は100年以上も前からつながりがある。“郵便局をめぐる活動”も含め、紹介しよう。
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■旅行貯金は大正時代には始まっていた
旅行貯金とは、郵便局の貯金窓口でお金(主に100円などの少額)を預けると、局名印が押されるもの。郵便局によっては複数の局名印を用意している。以前は主務者印も押印されたが、21世紀に入ると通帳が銀行と同じ様式に変わってしまったため、2005年3月からなくなった。
意外なことに、旅行貯金は大正時代の時点ですでに始まっていた。1916年に発売された『現在の生活費から思はぬ貯金を産み出す法』(嘉悦孝子著、春秋社書店刊)によると、旅行先の郵便局でお金を預けると、通帳に押印されるスタンプ、金額が記念になるという。醍醐味はこの本の刊行から104年経過した2020年でも変わらない。
同書に掲載された履歴の最初が「大正元年十二月五日 金五十銭 伏見」と明記されており、明治時代には確立されていたものと考えられる。
さて、旅行貯金に関する著名人の寄稿もいくつかある。そのひとり、作曲家の古関裕而(こせきゆうじ)氏は、知り合いが公演先などの町で旅行貯金を趣味としていることを『郵政』1960年10月号(日本郵政公社広報部門広報部刊)で述べた。現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『エール』で、そのようなシーンが放映されることを期待したいものだ。
■一部の郵便局には風景印も
郵便局によっては風景印という、イラスト付きの消印がある。郵便の窓口に、はがきを持ち込む、もしくは、その場ではがきを購入して依頼をすると、押印してもらえる。
また、手紙を出す際に、窓口で風景印を指定することもできる。なお、ポストに投函した場合は、風景印は押印されないのでご注意願いたい。