そして17年オフ、2つ目のポイントを迎える。

 メジャー挑戦を目指し再びFA権を行使するが、獲得球団は現れずロッテ残留となったのだ。

「メジャー願望はダルの影響も大きかった。活躍をリアルタイムで見せられ、現地の話をダル本人からも直接聞いた。『最高峰の舞台で再び投げ合いたい』と思った。条件が悪くても渡米するつもりだったが、それすら叶わなかった。失望感は大きく、側から見ていても元気がなかった」(在京テレビ局野球担当)

 目標が見えなくなり、投球自体も右肩下がりに落ち込んで行った。

 このままプロ生活も終焉を迎えるのか。そんな時に声を掛けてくれたのが、西武時代の同僚だった楽天の石井一久GMだった。

「GM就任直後から石井GMは涌井が欲しかったらしい。涌井も慕っていて、以前からメジャー時代の話など、いろいろと話していた。石井のためなら、と気持ちが再び高ぶったとしてもおかしくない。就任直後はいろいろ言われたが、石井GMはかなりのやり手ですよ」(在京テレビ局野球担当)

 石井GMによる涌井獲得が3つ目のポイントと言えるだろう。

 紆余曲折の末、かつての栄光時代と同様の投球を見せている。予想外と言っては失礼だが、楽天にとっては嬉しい誤算でもある。

 現実的に涌井のメジャー挑戦はなくなった。しかしダルが将来、日本復帰する可能性も考えられる。その時まで涌井が一線級で投げていれば、これだけ楽しみな対戦はない。涌井の完全復調、そして更なる進化は、ファンに大きな夢を見させてくれる。