安倍前首相と菅新首相 (c)朝日新聞社
安倍前首相と菅新首相 (c)朝日新聞社
ジム・ロジャーズ氏
ジム・ロジャーズ氏
日銀のETF累計買い入れ額と時価 (週刊朝日2020年10月2日号より)
日銀のETF累計買い入れ額と時価 (週刊朝日2020年10月2日号より)

「I bought more Japanese ETFs……(日本のETFをさらに買ったぞ)」

【グラフで見る】日銀のETF累計買い入れ額と時価

 本誌連載「2020年、お金と世界はこう動く」の筆者、ジム・ロジャーズ氏は8月31日、安倍晋三前首相の辞任表明を受け、本誌のメールに対して、こう打ち返してきた。

 ジム氏はこれまでの連載の中で、「最近、日本株のETF(上場投資信託)を買った」ことを明らかにしている。そのETFを、「安倍辞任」で買い増しした、というのだ。

 ジム氏といえばジョージ・ソロス、ウォーレン・バフェット両氏と並び、「世界3大投資家」の一人とされるマネーの巨人である。そのジム氏が数ある投資先の中から日本株ETFを選んでいる。

 そもそも「ETF」とは何か。経済アナリストの森永康平氏が言う。

「文字どおり株式市場に上場している投資信託です。ETFは株価が日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など、その国を代表する株価指数に連動するように運用されているのが一般的です。普通の投資信託は1日に1回しか買えませんが、ETFは株式市場に上場しているので、市場が開いていればいつでも売買が可能です。売買価格を指定する『指値』も使えます」

 こういうことだ。

 例えば日経平均を扱うETFの価格は、現物市場と同じ値動きをするように設定されている。先月28日、安倍氏の首相辞任の意向が伝わると、日経平均は一時、前日終値から600円超下がった。終値は300円安まで戻しているから、下がったタイミングで買えていれば、その日のうちに利益を出すこともできた。こうした構造から、ETFは株式投資に慣れた投資家向きの商品といえる。なるほど投資の大家、ジム氏に向いている。

「ジム氏はグローバルに投資している。だから日本については、個別企業の業績など詳しい要因を分析するのではなく、市場に幅広く投資するETFを選んでいるのではないでしょうか」(森永氏)

 今週号の連載でも触れられているが、興味深いのはジム氏のETF購入の理由である。これまでの連載でも、大意、次のように述べている。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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