国際調査チームの一員、聖マリアンナ医科大学の勝田友博講師(小児科)によると、国内の子どもや保護者の接種率も、昨季の6割程度から、今季は8割ほどに上がりそうだという。
「新型コロナウイルスのワクチンがまだできていないので、インフルエンザについてはしっかりとワクチンを接種して重症化を防ぎ、もし両方のウイルスが流行した場合の混乱に備えるしかありません」(勝田さん)
■時期をずらした接種も
ただし、希望者が全員、ワクチンを接種できるかどうかはわからない。今季、供給されるのは成人量で6356万回分の見込みだ。
加藤勝信・厚労相(現・官房長官)は9月11日、閣議後の会見で国民に対し、重症化リスクの高い人など、優先順位の高い人からワクチンを接種できるよう、時期をずらした接種などに協力を求めた。65歳以上の高齢者や、60歳以上で心臓や呼吸器などの基礎疾患がある人は10月1日から。10月26日以降は原則として誰でも接種できるが、日本感染症学会が強く接種を推奨している医療従事者や基礎疾患のある人、妊婦、生後6カ月~小学2年生までの子どもが優先的に接種を受けられるよう呼びかけた。
厚労省はインフルエンザの流行に備え、新型コロナウイルスの診療体制などの見直しも始めた。現在は感染症法上、「指定感染症」になっており、感染が疑われる人は原則、入院することになっている。
しかし、インフルエンザの流行で発熱患者が増えれば、見分けがつかないので疑い患者が増え、医療機関や保健所などがパンクする恐れがある。すると、本来なら救える患者が救えなくなってしまう。
■バカンスで再び拡大
厚労省は専門家によるワーキンググループ(WG)を作り、指定感染症としての措置や運用について見直しの議論を始めた。
「無症状者や軽症者を含めて原則として入院とする必要があるかどうかも、議論するテーマの一つです」
WGメンバーの一員、齋藤智也・国立保健医療科学院健康危機管理研究部長は言う。
今すでに感染者の多い自治体では知事の権限で無症状や軽症の感染者らにはホテルなどの療養施設で療養してもらうところもあるが、全国的にそれが原則となる可能性もある。見直しの議論は月内にはまとまる予定だ。
インフルエンザウイルスは地球上から消えたわけではない。バカンスの季節に人々の移動制限を緩和したフランスやスペインなどで最近、春の第1波を上回る新型コロナウイルスの感染が起きているように、ツインデミックを防げるかどうかは、個人の感染予防対策や、国際的な人々の往来、さまざまな活動の再開の仕方に影響される。
前出の石田さんは、感染予防対策の継続を訴える。
「手洗いやマスク、3密を避けるといった新型コロナウイルスの感染予防対策は、インフルエンザをはじめとする様々な感染症の予防にもなるので、継続してほしい」
(ライター・大岩ゆり)
※AERA 2020年9月28日号