インフルエンザ発生が少ない一因として、新型コロナウイルスの感染予防対策の効果が考えられる。

「ウイルス干渉」の可能性を指摘する専門家もいる。2種類のウイルスに同時に感染すると、体内でウイルス同士の競合が起こり、片方のウイルスの増殖が抑制される、というのだ。

 だが、基本的な感染防止対策まで緩めるわけにはいかない。

 季節性インフルエンザの流行規模は、もともと新型コロナウイルスよりはるかに大きい。国内の感染者数だけで通常、1シーズン約1千万人だ。しかも、発熱など新型コロナウイルスと症状が似ている。

 規模が小さくても、ある程度、インフルエンザが流行した場合、医療現場などでは大きな混乱が起きる可能性がある。

 倉敷中央病院呼吸器内科主任部長の石田直さんは言う。

「突発的に高熱が出るといったインフルエンザに特徴的な症状が出るか、味覚障害や嗅覚障害が起きるといった新型コロナウイルスに特徴的な症状が出ない限り、症状だけからインフルエンザと新型コロナウイルスを鑑別するのは困難です。従って、インフルエンザが流行して感染者が増え、熱の出た多くの人が、新型コロナウイルス患者を診療する態勢の整っていない診療所や一般病院の外来を受診すると、大混乱が生じる恐れがあります」

■検査をする重要性

 石田さんが委員長を務めた日本感染症学会の委員会がまとめた前述の提言では、症状のみでインフルエンザと診断して治療を行うと、新型コロナウイルスへの感染を見逃す恐れがあるとして、原則として両方の検査を実施するよう推奨している。ただし、新型コロナウイルスの迅速診断キットは供給数が少ないので、地域の流行状況や患者の行動歴などを考慮して感染リスクが低ければ、まずインフルエンザの迅速診断キットで検査するという選択肢も紹介している。

 提言によると、新型コロナウイルスとインフルエンザの混合感染の報告はまだ少なく、重症化するという報告はこれまでのところ無いという。

 今年はインフルエンザワクチンの接種希望者が増えそうだ。

 日本や欧米などの6カ国の小児医療センター17カ所で3月下旬から6月末に実施された調査では、回答した保護者2422人のうち、昨季、子どもにインフルエンザワクチンを受けさせなかった1459人中418人(29%)が、今季はワクチンを受けさせると答えた。

 調査を基に計算した調査対象国全体における1~19歳の子どものインフルエンザワクチン接種率は、昨季の38%から今季は16ポイント高くなる見通しだ。また、保護者自身の接種率も昨季の41%から18ポイント高くなる見通しだ。

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