9月に入り、波はあるものの、新型コロナウイルスの新規感染者は一時期よりは減少したように見える。だが、コロナウイルスは夏よりも冬に流行することが多い。秋冬にかけ、新型コロナとインフルエンザの「ツインデミック」を警戒する必要がある。AERA 2020年9月28日号から。
【図で確認】インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の違いは?
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「インフルエンザのワクチンはいつから打てますか?」
成宗診療所(東京都杉並区)には、9月早々からこんな問い合わせが続々と入りだした。
「例年、インフルエンザワクチンの問い合わせは、杉並区から高齢者に対して案内が送られる9月末になってから。今年はずいぶん早い」
と加藤章院長は言う。多くの内科系や小児科系の診療所やクリニックが似た状況にある。
背景には、9月に入り「第2波」こそ収まったように見えるものの、いまだに新型コロナウイルスが収束しない状況がある。今後、日本も含めた北半球でインフルエンザの流行する季節を迎えなければならないことで、新型コロナウイルスとインフルエンザの「ツインデミック」が起こる可能性があり警戒が必要だ、と国内外の専門家が警鐘を鳴らしている。
日本感染症学会も、両方が流行する場合に備えた委員会を立ち上げ、提言を出した。
■コロナは冬季に流行
通常の風邪を引き起こすコロナウイルスは、夏よりも冬に感染が広まりやすい。ハーバード大学の研究チームが通常のコロナウイルスの流行パターンに基づいて予測したところ、新型コロナウイルスも、冬季に夏季よりも大きな流行を起こす可能性があるという。
第2波が収束方向に向かい、イベントの人数制限は解除され、GoToキャンペーンには東京が追加される予定だ。5~8月にインフルエンザの季節を迎えた南半球の多くの国で、インフルエンザの報告がほとんどなかったというニュースも加わって、警戒を緩めている人もいるだろう。
世界保健機関(WHO)によると、オーストラリアは昨年、5~7月にかけて調べた検体の2~3割がインフルエンザ陽性だった。ところが今年は、調べた検体数は昨年より多いのに、4月以降、インフルエンザ陽性だった検体はほぼゼロだ。南アフリカやチリでも同様だ。
日本では厚生労働省が国内約5千カ所の医療機関のインフルエンザ発生状況を、毎年9月に入る第36週から調べる。今年の第36週(8月31日~9月6日)の報告は、岐阜県、大阪府、沖縄県から1件ずつ、合計3件だけだった。昨年の第36週は3813件。岩手、山形、島根の3県を除くすべての都道府県から報告があった。一昨年は338件だった。