基本は所属チームでの練習だと改めて思います。東京五輪に向けて水泳連盟は強化プログラムを充実させてきました。しかし、それが過剰になっていた面もあるのでは、という反省もあります。ジュニア選手のコーチや保護者の一部には、合宿を優先して、学校を休ませるのは当たり前という意識も生まれていました。

 地元開催の五輪には、大きな国の強化予算がつきました。五輪が終われば予算も減って、強化方法の見直しが必要だと重々承知していました。それが五輪を迎える前に思うようにいかない事態を迎えて、それでも「できることはある」と練習に工夫をこらして記録を伸ばしたジュニア選手が大勢いる。これは「五輪バブル」がはじけた後の強化方針を考えるときの道しるべになると思っています。

 五輪延期で「モチベーションが下がった」とやる気を失うトップ選手がいる一方、満足に泳げない練習環境の中で自己ベストを目指してこれまで以上の努力を重ねるジュニア選手もいます。困難なシーズンだからこそ、選手と指導者の真価が問われると思います。

 10月1~4日、東京辰巳国際水泳場で日本学生選手権(インカレ)が無観客で開催されます。今シーズン初めて開かれる競泳の全国大会です。ジュニア選手に負けないような好記録を期待しています。

(構成/本誌・堀井正明)

平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数

週刊朝日  2020年10月9日号

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