どのような立場にいるかを問わず、弱い気持ちになる人がいる。ならない人もいるが、なってしまう人が確かにいる。そこがコロナという病の特徴であり、大きな問題なのでは。そんなふうに思うようになったのは、芸能界で自死が続いていることと、少し関係している。
なぜ、華やかな世界で活躍している人が、そういう行動をとってしまうのだろう。調べると自死は夏以降、増えているようだ。警察庁がまとめている月別の自殺者数を見ると、5、6月は前年より少なかったのが7月から増加に転じ、8月は前年より200人以上多かった。
それぞれの事情があってのことではある。だが、コロナという病は、人と人とが離れることを求める。できるだけ外出せず、一人でいなさい、と。感染拡大防止の観点からは当然だ。だが、それによって、すごく大切なものを奪われてしまった。何かというと、「偶然」だ。人は案外、偶然というものに支えられているのではないか。そう思うようになった。
■会うことで救われる
きっかけは映画「82年生まれ、キム・ジヨン」だった。10月9日に全国で上映が始まるこの映画の試写を、9月に入ってすぐに見た。同名の原作小説は韓国で130万部、日本でも20万部突破というベストセラー。心の病を得たキム・ジヨンという女性の人生を通し、女性に与えられた理不尽さを描く「告発の書」だ。多くの女性に「ジヨンは私だ」と思わせ、男性にも読者が広がったと聞く。
映画は少し、趣が違った。希望の明かりが心にともる。そんな結末になっていた。「本はカルテで、映画は処方箋」。試写会場で配られたパンフレットに、原作の訳者である斎藤真理子さんが書いていた。
印象的だったのは、ジヨンの担当医師が女性になっていたことだ。原作は男性医師で、ジヨンのカウンセリングを記録、それが女性の生きづらさを綴ることになる。そういう構成になっていた。さらにもう一つ、重要な役割を担っていた。