関電はこの元役員の提訴を検討していくというが、一筋縄ではいかない。元役員は旧経営陣5人の提訴を主導したため、この5人につく弁護士グループには引き受けてもらえないというのだ。ある元幹部は「単独で弁護士を立てて闘うことになるのではないか。非常にまじめで、仕事もできる人間だっただけに気の毒なところもある」と同情する。
関電は、旧経営陣に対する訴訟だけでなく、半年に及んだ第三者委の調査が不十分だったことにも対応を迫られている。
関電は7月、子会社「KANSOテクノス」(大阪市)の元社長ら2人が森山氏から商品券約400万円や現金4万円を受け取っていたことを明らかにした。今井武・元社長が社長だった03~12年、商品券約400万円を受け取っていたというものだ。
返却などは済んでいたとするが、テクノス社の役員らは事実を知りながら、第三者委の調査に報告しなかったことになる。「過去のことを言うべきだとは思わなかった」(同社役員)などと釈明しても、今年6月の内部通報があるまで頬かむりを決めこんでいた。
関電は、調査が不十分だった子会社6社に対して、8月中旬をめどに再調査する方針を示したものの、いまだ公表には至っていない。
関電は年末に向けて、原発関連で大きな課題をいくつも抱えている。
関電が金品受け取り問題の発覚前、「最大の経営課題」と位置づけてきた一つが、使用済み核燃料を受け入れる中間貯蔵施設の候補地選定だ。年内をめどに原発のある福井県外でさがすことを約束してきたが、難しい状況に陥っている。一連の不祥事で信頼が地に落ち、受け入れる自治体が現れにくいためだ。
さらに、関電は運転40年超の「老朽原発」3基の安全対策工事を順次終え、再稼働させたい意向だが、地元の同意を得られる見通しが立たない。
なによりも、再稼働できるかどうかのキーマンである福井県の杉本達治知事が、子会社での金品受け取り問題の発覚について「当然、信頼関係は傷つくわけで、地元としては大変遺憾だ」とコメント。老朽原発の再稼働についても「住民の信頼を得るという前提でなければ物事は進まない」と釘を刺す。
原発の比率が他電力よりも高い関電にとっては、“1丁目1番地”である電気事業そのものが正念場を迎えている。再生に向けた取り組みは待ったなしだ。
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関電は子会社6社に対する再調査結果を10月6日に公表。KANSOテクノスの2人とともに、関電プラント(旧・関電興業)の元役員ら7人が、福井県高浜町の元助役(故人)から商品券や重箱、金杯など計300万円以上の金品を受け取っていたと発表した。一連の金品受領の対象は関電元役員ら計83人、総額約3億7千万円相当となった。
調査は7月31日~10月2日、6社の元役員ら約240人から電話で聞き取りをするなどした。関電プラントでは、元助役側との金品授受を記録したメモが残っていたという。
※週刊朝日 2020年10月16日号に加筆