今年のノーベル医学生理学賞を受賞したのは、C型肝炎ウイルスの発見に貢献した研究者でした。意外なことに、肝臓の病気であるC型肝炎は、皮膚に出るブツブツなどの症状から、その病気を疑われて見つかることがあるといいます。京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師が解説します。
【写真』ノーベル賞では足りないと言われるのはこの日本人学者!
* * *
2020年のノーベル医学生理学賞はC型肝炎ウイルスの発見に貢献した3人の研究者が受賞しました。ウイルスが引き起こす肝炎はいくつも知られており、A型、B型、C型肝炎が特に有名です。
A型肝炎は水や食品を介して感染することが多く、日本では生ガキの摂取が原因として多いようです。B型肝炎は血液や体液を介して感染します。C型肝炎も血液を介して人にうつるため、C型肝炎ウイルスが発見される前に献血などを介して感染者が増加しました。
C型肝炎ウイルスに感染すると時間をかけてゆっくり肝硬変となり、そして肝がんへと進行します。現在は有効な薬剤(直接作用型抗ウイルス薬)が登場し治せる病気に近づきました。治療にしっかり結びついたC型肝炎ウイルスの発見が今年のノーベル賞を受賞したのは、医師であれば誰でも納得でしょう。
私たち皮膚科医は皮膚の病気を扱っていますが、C型肝炎などのウイルス性肝炎とは深いつながりがあります。皮膚のブツブツをみてC型肝炎を疑うこともあります。
扁平苔癬(へんぺいたいせん)という病気があります。手足に青みがかった特徴的な皮疹ができる皮膚病です。皮膚科専門医がこのブツブツをみると、いくつか連想して思い浮かぶものがあります。まず、口の中に白いレース状の病変はないかを確認します。扁平苔癬では、口腔粘膜に白色線状とよばれる病変が出現することが多いためです。次に爪の変形がないか。爪の変形も扁平苔癬の特徴的な所見です。最後に、C型肝炎ではないかを考えます。扁平苔癬とC型肝炎の関連が広く知られており、皮膚科の教科書には必ず記載されています。なので私たち皮膚科医が扁平苔癬を診断すると、口の中を見て、爪を見て、C型肝炎がないか採血でウイルス検査をすることになります。