それから3人の子宝に恵まれ、ワーママ外科医として日々奮闘している。また事故後、出産に加えて「やりたい」と思ったのが漫画だった。実はさーたり医師はアニメが大好きで、小学生から高校生にかけては自ら同人誌を作ってはコミケに参加していた筋金入りのオタクなのだ。事故の影響で本格的に仕事復帰できず、不本意ながらも時間ができた。

「久々にペンを握ってみようと思いました」

 折しも女医のブログがはやっていたが、おしゃれなレストランに行ったなど、セレブ系の内容が多かった。

「私はそんな華やかな暮らしなんてしていない(笑)。外科医でママでという、ありのままの日常を4コマ漫画にしたらおもしろいかな、と」

■仕事のリアル、医師あるある、子育ての奮闘を漫画で描く

 2009年、ブログ「腐女医が行く!!~外科医でママで、こっそりオタク~」をスタートした。仕事のリアル、医師あるある、そして子育ての奮闘や子どもたちの成長を、ときにコミカルに、ときにホロリとさせる漫画で描いた。人気に火がつき、コミックエッセー『腐女医の医者道!』も出版。すでに4冊を数える。
 
 自ら選んだ道とはいえ、その忙しさは尋常ではないはず。さーたり医師は「確かにドタバタですが」と笑いながら続ける。

「楽なことが楽しいわけじゃない。大変だからこそ、難しいからこそやりがいがある。で、やりがいを感じていると、どんどん楽しくなってくるんです」
 
 新型コロナウイルスという未曾有の感染症によって、医療現場は過酷さを極めている。医師を目指しながら不安を感じている学生もいるだろう。

 過去には受験で女子学生が不当に不合格にされるという問題もあった。医学部を目指すかどうか悩んでいる学生に、こうエールを送る。

「医療の世界は大変だからとか、女医は働きにくいからとか、『やれない理由』を作ってやりたいことを諦めないでほしい。人のためになることができる医者の仕事は、何にも代えがたいやりがいがあるから」
 
 さーたり医師自身は、これからも外科医、ママ、漫画家という「三足のわらじ」で邁進(まいしん)していく。

「外科医として働きながら、漫画で医療と一般の方々の架け橋になりたい。検査に行こうと思ってもらったり、病気について知ってもらったりできたら、医者でオタクとしては本望です!」

さーたり/1978年東京都生まれ。光塩女子学院高等科卒業。2003年杏林大学医学部卒業、順天堂大学医学部附属順天堂医院肝・胆・膵外科入局、13年同大学院博士課程修了。医学博士。大学病院勤務の傍らブログでマンガの発表を始める。著書に『腐女医の医者道!』(シリーズ全3巻)、『外科医のママ道! 腐女医の医者道!エピソードゼロ』など。10月に『感染症とワクチンについて専門家の父に聞いてみた』(いずれもKADOKAWA)を刊行予定。ブログ:https://ameblo.jp/surgery/

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