過去には、2008年北京オリンピックの水泳で、ハイテク技術で作られた「高速水着」を着用した選手たちが、多くの世界記録を打ち出したことを覚えている人も多いでしょう。薄く軽量で、水中での抵抗の小さいフィット感のある高速水着は、素材や形状、着圧にこだわり流体力学的な解析を応用した革新的な製品でした。その後、開発競争が過熱したことで、国際水泳連盟が水着の規制ルールを打ち出しました。結果的に、高速水着は国際大会から姿を消したという歴史があります。

 競技用スポーツウェアは、競技規則に適応することを基本としながら、より高い競技性を追い求めて開発されています。そして、その進化を反映した、一般用のスポーツウェアも、店頭に並ぶようになっています。スポーツウェアを選ぶときにどんなポイントに着目すればよいか、ここでいくつか紹介しましょう。

 まずは、「体温調節性」です。暑熱あるいは寒冷環境下でのスポーツでは、体温の最適化が必要です。夏季の暑さや運動にともなう熱産生により、体温が上昇すると、からだは発汗により熱放散量を増加させてからだを冷やします。吸汗速乾性の機能をもつウェアを選ぶことで、体表に出た汗を素早く吸収して乾かし、ウェア内をドライで快適な状態に保つことができます。また、反対に寒冷な環境で着用するウェアの場合には、高い保温性と、発汗時のウェア内のムレを防ぐ吸湿性を重視しましょう。

 次にあげられるのは、「動作性」です。スポーツでは、種目によって走る、跳ぶ、投げる、滑る、泳ぐなど、特有の動きがあります。それぞれのパフォーマンスを落とさないよう、からだの動きを妨害しない伸縮性をもつもの、ウェアと皮膚の摩擦が起こりにくいもの、動作時の空気抵抗、あるいは水中では水の抵抗が小さいものが条件となるでしょう。もちろん、肌触りがよく快適なフィット感があることも大切です。

 そして、「パフォーマンス向上と損傷の防止」です。みなさんは、「着圧ウェア」というものをご存じでしょうか? 「コンプレッションウェア」とも呼ばれ、もともとは血液循環改善の目的で医療用に設計された衣類が、スポーツウェアへと進化しました。

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「着圧ウェア」は圧が強すぎない自分のからだに合ったものを