それまで元気に生活していた高齢の親が転倒で骨折した場合、医療の手を尽くしてもそのまま自立した生活が難しくなることがある。今は関係なくても、高齢者の社会保障についての大まかな知識は身につけておくべきだ
それまで元気に生活していた高齢の親が転倒で骨折した場合、医療の手を尽くしてもそのまま自立した生活が難しくなることがある。今は関係なくても、高齢者の社会保障についての大まかな知識は身につけておくべきだ
この記事の写真をすべて見る
小泉正典(こいずみ・まさのり)/特定社会保険労務士。1971年、栃木県生まれ。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士小泉事務所代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は、労働・社会保険制度全般および社員がイキイキと働きやすい職場づくりコンサルティング。『社会保障一覧表』(アントレックス)シリーズは累計55万部のベストセラー
小泉正典(こいずみ・まさのり)/特定社会保険労務士。1971年、栃木県生まれ。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士小泉事務所代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は、労働・社会保険制度全般および社員がイキイキと働きやすい職場づくりコンサルティング。『社会保障一覧表』(アントレックス)シリーズは累計55万部のベストセラー

 社会保険労務士の小泉正典さんが「今後いかにして、自分や家族を守っていけばいいのか」、主に社会保障の面から知っておくべき重要なお金の話をわかりやすくお伝えする連載の第13回。親が高齢になった時に「家族が利用できる」社会保障についてのお話です。

【写真】「自分や家族を守る」社会保障を教えてくれた社会保険労務士の小泉正典さん

*  *  *

 38歳の柳田さん(仮名)は、同居する73歳になる父親の健康について年齢相応には心配はしていましたが、特に不安となることはありませんでした。シルバー人材センターに登録し、現役時代とあまり変わらない元気さで働いている姿を見ていると、親の高齢化を現実として認識することがあまりなかったのです。

 ところがある日の深夜、父親がトイレに行く際に廊下の段差でつまずき転倒、ひざ関節のじん帯を損傷し手術してから生活が一変します。手術後もひざの機能に大きな障がいが残り、出歩くことはもとより、入浴など日常生活も介助がないとできなくなりました。それにともなって体全体の機能も低下し始め、近い将来寝たきりになる可能性が現実味を帯びてきました。

 共働きである妻に、介護をすべて任せるわけにはいきません。今のところ、介護そのものは生活ができなくなるほどの負担にはなっていませんが、介護保険を適用するための要介護認定の申請や、近くにどのような介護施設があってどんな手続きが必要かなど、複雑な介護保険について一から調べる時間が必要になりました。地域包括支援センターに通うにも、多くの時間が必要です。

 いったん家庭と生活の混乱を収めるため、妻と介護を分担しながら柳田さんは、会社と時間をかけて話し合い「介護休業」の申請をすることにしました。

■介護のために労働者が必ず取得できる「介護休業」と「介護休暇」
 
 冒頭の例のように高齢の親がそれまで元気に生活していても「ちょっとした転倒による骨折」や「軽症と思っていた風邪の悪化」から想像以上に回復が長引き、医療の手を尽くしてもそのまま自立した生活が難しくなることがあります。

次のページ
高齢者の社会保障の大まかな知識は必ず知っておくべき