これは、高齢者本人の体力とは関係なく、何かのきっかけでどのような家庭でも起こりうることです。今は関係なくても、高齢者の社会保障についての大まかな知識は必ず身につけておくべきです。
この連載で2回にわたって介護保険が適用される介護サービスについて説明してきましたが、今回は高齢者を支える家族に対しての社会保障を紹介したいと思います。
前回解説したように、要介護認定を受けて介護サービスの「特別養護老人ホーム(特養)」や「介護医療院」などに入所する場合は、生活のすべてが施設になるので金銭面を除き家族の負担は大きく減ります。
ただし、これらの施設に入るには、まず市区町村の担当者などから「要介護度」の認定を受け、介護支援の専門家のケアマネジャーとどのように介護をしていくか「ケアプラン」を作らないといけないため、必要になったからといってすぐ、施設などの介護サービスを利用することはできないのです。
また要介護度によっては介護サービスを適用できる施設に入ることができませんし、希望者が多い施設は入所まで待機となる可能性もあります。
このような場合、介護の中心となるのは家族になります。家族の人数にもよりますが、時間を問わず必要な介護のために、働き手となっている子どもやその配偶者が仕事を続けることが難しくなる場合も少なくありません。
メディアなどでも「介護離職」が話題になることがありますが、介護のために仕事をやめてしまうのは、その後の生活を考えるとできる限り避けたいのは間違いないでしょう。
そのような場合に使いたい社会保障が「介護休業制度」です。この制度は、要介護状態の家族の介護を行うために「介護休業」や「介護休暇」、介護のための労働時間の短縮、残業の免除などを事業主に求めるようにできるものです。介護のための休業や休暇は育児・介護休業法で定められているもので、原則的に事業主は休業の条件を満たしている労働者の休業・休暇を拒むことはできません。