中でも、山口県の新鮮な魚を食べ馴れているので、どうしても干物を自分で作りたくて、鯵を開いて首相公邸の屋根に干して作った話など、ユーモアもありすっかり打ちとけてしまった。その話術も夫人としての仕事の一つ、実に存在感のある方だった。
佐藤総理夫人ではなく、立派に、佐藤寛子という独立した女性だった。
これからの女性はそれが当たり前。しかもファーストレディなのだから自らその範を示していただきたい。
おそらく真理子夫人も、気配りの出来る素敵な女性なのだろう。人柄が滲み出ている。それでなければいつも人が集まる政治家の妻は務まらないという。
どうか総理夫人だからといって、余分な気をつかわず自然なままであっていただきたい。人目を気にせず、一人の人間としてあることが、菅総理を支えることだと思うのだが。
■下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『極上の孤独』『年齢は捨てなさい』ほか多数
※週刊朝日 2020年11月13日号