横浜血管クリニックで冷え症外来を担当する林忍医師は、手足の冷たい「冷え症」の人ほど、風呂はぬるめのほうがいいと語る。

「体を温めようとして42度や43度の熱いお湯に入ると、交感神経が優位になって血管が収縮し、冷え症を悪化させる可能性があります。血行を促進するには、副交感神経を優位にすることが大切。38~40度未満のぬるめのお風呂に入りましょう。最初はぬるすぎると感じるかもしれませんが、体温より高いわけですから、ちゃんと温まります。本でも読みながら30分以上首までつかってください」

■就寝時/手足が冷えるなら目を温めて放熱

 夕方にかけて上がった体温が下がることで、穏やかな眠りがやってくる。キーワードは「放熱」だ。ところでなぜ、体温が下がるのか。

「人間は50キロ、70キロという肉の塊。ローストビーフの塊の中心部がなかなか冷めないのと同じように、深部体温を下げるのは大変なことです。その仕組みの一つとされているのが、手の甲と足の甲からの放熱です」(内山医師)

 1999年、スイスのバーゼル大学の研究グループが、就寝1~2時間ほど前から手先や足先の皮膚の表面温度が上昇することを発見した。つまり、手の甲と足の甲から放熱することで、深部体温を下げているのだ。

「放熱しているときは手足がポカポカ感じます。冷え症の方が寝つきが悪いのは昔から知られていましたが、手足が冷たく、うまく深部体温を放熱できないためではないかと考えられます」(同)

 手足を温める以外に有効なのは、目の周りを温めることだ。詳しいメカニズムはわかっていないが、就寝時に目の周辺を温めることで、入眠前の手足の放熱とよく似た変化が起こるという。

 さらに菅原さんは、就寝中も熱を放出できるよう、襟元や袖口が詰まっている衣類は着ないほうがよく、寝る直前にスマホやパソコン画面を見るのはNGだと、アドバイスする。

「脳の温度が上がって、寝つきが悪くなります。とはいえ、寝る直前になって考え事が浮かんできたり、気分が高揚して寝つけない、という日もあるでしょう。そういうときは、耳から上の頭を冷やしてください」

 保冷剤をタオルでまいてもよいが、乾いたタオルを冷凍庫で冷やしておいて、それを枕に敷くと便利だという。ただし、首が冷えると脳が覚醒してしまう。耳から下の首は絶対に冷やしてはいけない。

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