林:投稿するなら、私なんか「手で書いてなんぼ」と思いますけどね。キーを打つんじゃなくて。
俵:いや、そんなこともないですよ。ネットだったら10首20首送れるけれど、はがきは今63円でしょう。10首送ったら630円かかっちゃうし、若い人はSNSで短い言葉を発することに抵抗がないですからね。ネット投稿もとてもいいと思います。
林:そうですか。でも私はやっぱり色紙にさらさらさらと美しく書きたいな。亡くなったうちの母はずっと短歌をやってたんですが、「下手な字では出せない」と言って書道をやってたこともあるし、書と短歌って結びついてるような気がしてたんですよ。
俵:それは素晴らしいですね。いっぽう、「万葉集」は漢字を借りて万葉仮名で記されてるけど、その前は文字がなかったわけですよね。声に出してつくって、それが耳から入ってきたのがそもそもなので、私自身はそんなに文字にこだわりはなく、むしろ耳で聞いてどうかな、という意識でつくってますね。皇居での新年の歌会でも朗々と読み上げています。
林:美智子上皇后さまがおつくりになる歌って、素晴らしいと思いませんか。
俵:ものすごくうまいですね。お世辞抜きで。
林:皇室の方々が皆さまお詠みになりますけど、美智子さまだけ、ほかの方々と違いますよね。
俵:皆さまそれぞれきちんと学んでおられるので、レベルが高いものが並びますが、美智子さまは抜群にうまいです。
林:新聞のほかにも、いろいろ選者をなさってるんでしょう?
俵:そうですね。若い人たちにも短歌がすごく盛んになってきていて、宮崎で「牧水・短歌甲子園」という高校生の短歌の大会の審査を10年ぐらいやっています。盛岡には啄木の「全国高校生短歌大会」があって、大伴家持ゆかりの高岡(富山県)では「高校生万葉短歌バトル」というのがあります。今月この三つの大会の優勝校が宮崎の音頭で交流戦をするんです。学生短歌会という大学生の短歌会もどんどんできていて、若い人にここまで広がっている要因の一つは、SNSの影響かなと思います。