「弱みを共有しているから、仲よくなれるというのもあるかもしれません」
と話すのはCさん。彼女が数年来親しくしている女性のひとりは、夫やほかの家族も知らない“過去”をCさんには打ち明けている。その友人は、Cさんの病歴を知っている。病気とは非常にプライベートなことなので、誰とでも共有したいことではないだろう。Bさんも次のように話す。
「社会人になってからの時間をずっと一緒に過ごしてきて、いろんな失敗もかっこ悪いところもお互いよく知っているから話しやすいっていうのはありますね。特に私はみずから進んでネタを提供するタイプ。私があけすけに話すから、ほかの人も気軽に話せるみたい」
弓子ら3人も、おそらくは人を選んで話している。弓子は職場の人にはいくら親しくても夫の不倫について話さないだろうし、フリーランスで仕事をするユリや美玖なら悪い噂でも立てば仕事への影響も考えるだろう。生き方が多様化し、そのなかで生きづらさを抱える女性が多いいま、“この人たちだから話せる”という人間関係は実に貴重だ。
意見が食い違えば、本人のいないところで批判することもある。陰口といえばそれまでだが、Bさんはこう見ている。
「むしろ、この先も関係をつづけていきたいからこそだと思います。違和感をこじらせないよう、ほかの子にこぼす。通風孔みたいな役割があるんじゃないかな」
親密でありながらドライな面もある。流動性に富み、距離感を測りながら常に変化する。そんな関係性のなかで生きている現代女性たちのリアリティが、『fishy』には詰まっている。(文/三浦ゆえ)