
国際関係をかき回したトランプ氏に代わり大統領に就くバイデン氏への期待は高い。だが国内融和のため対中強硬姿勢は避けられず、対立が深刻化する懸念もある。バイデン大統領誕生後の米中関係に注目した、AERA 2020年11月30日号の記事を紹介する。
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菅義偉首相は就任の9日後の9月25日、習近平中国国家主席と30分の電話会談を行い「首脳を含むハイレベルで2国間および地域、国際社会の諸問題について緊密に連携していこう」との方針で意見が一致した。一方、11月12日にはバイデン氏と15分間の電話会談で「日米同盟の強化、気候変動問題での緊密な連携」で合意した。
安倍晋三前首相はトランプ追従一本槍の親米派と見られがちだったが、06年最初に首相に就任して12日後に北京に飛び、胡錦濤主席と会談、「戦略的互恵関係」の構築で合意した。14年には習近平主席と尖閣問題で「双方が異なる見解を有していると認識する」として事実上棚上げにした。また中国の「一帯一路構想」への協力を表明し、今年には習主席を国賓として迎え、日中和解の完成を内外に示すはずだった。
菅首相も米中双方と「緊密な連携」を約束する二股外交を継承している。狡猾なようだが国際関係ではよくあることで、男女の仲とはちがうのだ。
トランプ氏は海外情勢に関する知識、経験が乏しく「アメリカ第一」を叫んで米国の国際的指導力を放棄した。元々米国が主導したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)や地球温暖化に対処するパリ協定などから次々に離脱し、国際社会からの孤立を深めた。
さらには「NATO(北大西洋条約機構)は冷戦期の遺物」だとして在独米軍を大幅削減、日本と韓国には駐留米軍の経費負担を4倍、5倍にするよう迫るなど、まるで同盟破壊を狙うような暴挙を次々に行ってきた。
この4年、多くの国がトランプ氏の予測不能、非合理な言動に振り回されてきただけに、彼の敗退が喜ばれるのは当然だ。中国外務報道官もバイデン氏の勝利が確定した11月13日に祝意を表明した。菅首相が8日にツイッターで「心よりお祝い申し上げる」と発信しても、安倍氏がトランプ氏に尻尾を振ったような侮りを受けないですむ。