伊藤教授は、「条例制定によってヘイトのクラスターをあぶりだすことが可能になったのは、『ヘイトスピーチは絶対に許せない』という社会規範を市民運動や地方メディアが先導する形で作りあげたからです。フェイクについても『蔓延を許さない』という社会規範を明確化する必要があります」と話す。

 フェイクの被害者は私たち自身だ。

「スパムメールが蔓延するとメールというリソース自体が使い物にならなくなってしまうのと同様に、フェイクが蔓延すると、インターネットというメディアが使い物にならなくなってしまいます。コミュニケーションのプラットフォームを健全に保てなければ、私たちの共有地がやせ細ってしまいます」(伊藤教授)

 フェイクや真偽不明の情報は「大阪都構想」の住民投票や米大統領選をめぐっても相次いだ。左右両派の対立がフェイクを誘発するのであればなおさら、その抑止には政治的立場を超えて社会全体で取り組まなければならない。(編集部・渡辺豪)

AERA 2020年11月30日号

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