■YouTubeチャンネルやまとめサイトなどの台頭
報道のプロがなぜ、フェイクに踊らされるのか。
前出の伊藤教授は、まとめサイトやYouTubeチャンネルといった「中間的なメディア」の台頭で、これまで別物と捉えられていた流言と報道の境界があいまいになっていることが背景にある、と指摘する。
「ネットやSNSを通じて『中間的なメディア』が発信、拡散する根拠不明の情報があふれる中、庶民感情は流言的なものと親和性が強いため、そちらに近づこうとして引きずられてしまったのでは」
マスメディアの場合、事実と異なる情報を流せば、今回フジテレビが対応したように自主的に謝罪や訂正をするのが通例だ。他にも、日本民間放送連盟や放送倫理・番組向上機構(BPO)、日本新聞協会、日本雑誌協会といった業界(関連)団体が加盟社の報道内容の倫理向上に努めてきた。ヤフーやフェイスブックといったネット上の主たるプラットフォーマーもフェイクに対する自主規制・監視を強化する流れが確立されつつある。
しかし、まとめサイトやYouTubeチャンネルといった「中間的なメディア」が拡散するフェイクをチェックしたり規制したりする仕組みは確立されていない。これがフェイクを蔓延させる「抜け道」になっている可能性もある、と伊藤教授は指摘する。
■「蔓延を許さない」という社会規範の明確化が必要
では、どうすればフェイクの蔓延を防止できるのか。ヘイトスピーチに対処する動きにヒントがある、という。
大阪市は19年、ヘイトスピーチと認定されたインターネットまとめサイト「保守速報」の運営者と政治団体の代表者の氏名を公表。川崎市も今年、在日コリアン3世の女性を標的にしたツイッターへの投稿2件についてツイッター社に削除要請するなど一定の成果が出ている。
17年にはテロやヘイトスピーチを助長するYouTube動画に自社広告が表示されたことによる企業ブランド低下を危惧した米国の大手広告主が、一斉に広告出稿を停止。YouTubeは規約違反の動画削除や拡散防止システムの確立、チェック体制の強化といった対応を迫られた。