古賀茂明氏
古賀茂明氏
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疑惑が再燃した安倍前首相(c)朝日新聞社
疑惑が再燃した安倍前首相(c)朝日新聞社

「桜を見る会」前日に安倍晋三前総理後援会がホテルで開催した「前夜祭」の費用の一部を安倍氏側が補てんしていたというニュースが注目を集めている。自分の選挙区の有権者の飲食代の一部を負担していたとなれば、公職選挙法違反になりかねない。それを免れたとしても、前夜祭でのカネの出入りを政治資金収支報告書に書いていなかったのは、政治資金規正法違反となる。

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 ただし、安倍氏の致命傷になるかどうかは、安倍氏本人の関与いかんによる。秘書がやったことで本人は全く知らなかったということにできれば、安倍氏は政治的、道義的責任は問われても、犯罪者として政治生命を絶たれることはない。

 本人の関与は、関与した複数の秘書らと安倍氏本人しかわからない。つまり、秘書が罪を被り、安倍氏は知らなかったと証言すれば安倍氏は罪を免れる。もちろん、秘書には相当高額な報酬を約束しなければならないであろう。一方、関与した秘書の一人でもこの取引を拒絶すれば、安倍氏は非常に危険な立場に追い込まれる。それを避けるには、本件の捜査自体を止めるしかない。

 現に、今年2月までの間、安倍氏は、子飼いの黒川弘務・元東京高検検事長を守護神として、この問題の本格捜査を止めてきたと言われる。その黒川氏の定年が今年2月に迫ると、本来違法であるにもかかわらず、無理やり黒川氏の定年を延長し、捜査ストップを続けさせた。しかし、この違法な定年延長は逆に世論の強い反発を呼び、検察に対する国民世論のプレッシャーは過去にないほど高まった。放置すれば、検察も動かざるを得なくなる。国会会期は残り約4カ月。時間稼ぎで逃げ切りというのも無理だ。最大の証拠となる飲食代の請求書や明細書は、民間企業であるホテル側にあり、いつ流出するかわからない。さらに、一流ホテルの会食を1人5千円でできるかどうかという論点は非常にわかりやすく、国民の関心を引き続けると予想された。

 検察の動きを止め続けるには、検察に対する国民世論の圧力を弱めるしかない。この先は私の「珍説」だが、聞いてほしい。

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