「日本政府は辺野古移設が日米同盟の抑止力にとって不可欠のように主張しますが、米側の考えとはかけ離れています。辺野古移設計画はもはや菅義偉首相がこだわるがために存続している『スガ案件』と言ってよいでしょう」(野添さん)
問われているのは日本政府の主体性なのだが、現実を直視しないために柔軟な政策転換を図れず、いたずらに血税を注ぐことを止められないのが実情だ。
加藤勝信官房長官は27日の会見で、CSISの報告書で辺野古新基地の完成が困難視されている点について問われ、「米国の一シンクタンクの報告」と意に介さない姿勢を示した。だが、安保通の自民党国会議員からはこんな本音も聞かれる。
「政権移行期にブチ当てて出された報告書ですし、日米政治にかかわる『ジャパン・チェア』からの提言であれば大事件です」
■再検討の「余地」
今回の報告書は、具体的な政策提言にまで踏み込んだ内容ではない。あくまで軍事の観点から辺野古が実現困難であることを客観分析として提示したにすぎない。ただ、一つの「潮目」と捉えることも可能だろう。
「(辺野古新基地建設は)もともと米側の顔色をうかがって遮二無二に進めてきたわけですから、米側が別の、より軍事的合理性の高い投資を考えているのだとすれば、再検討の余地はあると思います」
そう指摘した上で、自民議員はこう続けた。
「中国の脅威は、量的にも質的にも辺野古計画を策定した1990年代半ばとは全く異なっています。ただ、米海兵隊司令官が新たな海兵連隊を沖縄に配備する計画を公言していますので、『辺野古断念』が必ずしも沖縄県民の願いと一致するかどうかは余談を許さないと思います」
実際、執筆者のカンシアン氏は代替案について前出の沖縄タイムスの取材に「私見」と断った上で、普天間飛行場の機能を米空軍嘉手納基地に統合する案を検討する可能性が高い、としている。同じ沖縄県内に移設させるこの案は、地元の反対も根強く、過去に何度も浮かんでは消えてきた「筋悪」の案だ。