普天間飛行場の移設へ向けて、埋め立て工事が進む辺野古沖(c)朝日新聞社
普天間飛行場の移設へ向けて、埋め立て工事が進む辺野古沖(c)朝日新聞社
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 米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が11月に発表した報告書で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の代替施設として名護市辺野古で建設が進む新基地について、「完成する可能性は低い」と分析していることが分かった。要因として工費の膨張と工期延長を挙げている。

 報告書を執筆したのは、国際安全保障分野を担当するマーク・カンシアン上級顧問。元海兵隊大佐の軍事専門家だ。沖縄国際大学の野添文彬准教授はこう解説する。

「このレポートは2021年度予算における海兵隊の兵力を分析したもので、筆者は米国で有名な海兵隊専門家です。海兵隊の兵力や戦略に加え、バーガー海兵隊総司令官が進める組織改革について分析したものです」

 報告書は沖縄、グアム、日本の米海兵隊に関する状況分析の項目で辺野古新基地にも触れ、「この計画は完成予定が2030年まで延び、工費が急騰するなど困難な状況が続いている。完成する可能性は低いと思われる」と論評している。

■「3500億円以上」から大幅修正

 日本政府は昨年12月、大浦湾に広がる「マヨネーズ並み」の軟弱地盤対策などで新基地の工期は少なくともさらに12年かかり、完成は2030年代以降にずれ込むと発表。これに伴い、14年時点で「少なくとも3500億円以上」としていた総工費も9300億円に修正した。報告書はこうした流れを踏まえたものとみられる。野添さんは言う。

「今回明らかになったのは、米側は辺野古新基地建設を客観的に実現困難だと見ていること。さらに米側は、辺野古移設計画の完成をあてにしておらず、必要だとも思っていないという現実です」

 報告書を執筆したカンシアン氏は、「沖縄タイムス」の取材に「建設に伴う技術的困難、経費膨張、工期延長、地元の反対などで最終的には日本政府が中止、あるいは縮小するのではないか」(11月30日付)と予測している。

■辺野古移設は「スガ案件」

 辺野古への新基地建設をめぐって政府は、普天間飛行場を閉鎖・返還するための「唯一の選択肢」との見解を繰り返しているが、米側の客観評価はそれとは異なることが浮き彫りになったといえる。

 野添さんは「報告書の筆者は日米関係の専門家ではないので、直ちに対日政策に影響を与えるわけではない」としながらも、「軍側の本音を示している」と指摘する。海兵隊の航空計画に18年度まで記載されていた辺野古新基地の建設スケジュールが、19年度には削除されたこととも符合するという。

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