■支援に批判的な声持つ人も 自らが当事者になる恐れ

 だが、加害者家族への支援に対しては批判の声もある。家族を奪われ傷つけられ、絶望のどん底にいる被害者の苦しみを思い、加害者家族の支援に否定的な意見を持つ人は少なくない。この点について阿部さんは、二つの観点から加害者家族の支援が必要と説く。

「まず人権です。被害者と加害者の人権は法律で守られています。しかし、人権が守られず、支援からこぼれ社会的制裁によって苦しめられているのが加害者家族です」

 次に「再犯防止のために加害者家族を守る必要がある」と語る。

「家族は加害者更生の支えとなる重要なファクターです。そのファクターを、誹謗中傷や嫌がらせで自殺に追いやったり、日常生活が困難になるほど追い詰めたりすれば、加害者が戻る場所がなくなり更生を妨げることになります。被害者に対する損害賠償の責任を果たすことも難しくなります。家族への制裁にためらいがない社会は、健全とは言えません」

 では社会が変えるべきことは何か。阿部さんは、「マスコミの報道の在り方」と「長期的視点でのケア」が大切と話す。

「事件の後、マスコミは犯罪者が事件を起こしたという第一報を伝えて終わりますが、その後、たとえ事件が不起訴や無罪になったとしても人々の記憶には報道の事実だけが残ります。『推定無罪』の原則に基づき、有罪判決が下された段階で実名報道するべきです。そして長期的視点に立ち、加害者家族のプライバシーに配慮した加害者家族の相談窓口や支援組織を徐々に増やしていくことが重要です」

 誰もが加害者家族になる可能性を抱えている。生きづらさに苦しむ加害者家族への支援もあって初めて、成熟した健全な社会になる。(編集部・野村昌二)

AERA 2020年12月7日号

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