冒頭で紹介した暴走事故加害者家族も、重い十字架を背負うことになった。
この加害者家族の相談にも乗ってきた阿部さんが、ウェブメディア「現代ビジネス」(10月9日)に寄稿した記事の主旨は次の通りだ。
19年4月下旬、「加害者家族ホットライン」に、父親が運転していた車が事故を起こし、多数の被害者を出してしまったという家族から電話が入る。
被害者の方々の容態が心配で、車に同乗していた母親も生死にかかわる重傷だという。何日も食事が喉を通らず全く眠れていない。言葉は少なく、憔悴しきっている様子が伝わってきた。
相談は匿名で、事件の詳細をあれこれ聞くことはしない。相談者が、「池袋暴走事故」の加害者家族だと判明したのはだいぶ後のことだった。
「正直、逮捕してもらいたかったです」
家族はそう話した。
家族と話して、被害者を気遣う言葉が出なかったことはない。親子を見るたび事故のことが思い出され、胸が詰まる思いだという。
車に同乗していた母親は、ICUに20日間入る大怪我を負った。母の様子を見るたび、事故で怪我をされた被害者とその家族も、相当に辛い思いをしていると思い心が苦しくなるという。
「あの事故を忘れた日はありませんし、これからも永遠に忘れることはありません」(家族)
家族として、事故を起こした父親に対して怒りが抑えられなくなる瞬間もあるという──。
■明治以来の「連帯責任」背景 影響は親にも子にも及ぶ
一つの犯罪が、被害者と同様に加害者の家族を奈落の底に突き落とす。この加害者家族も犯罪者の身内という「烙印」を押され、世間から糾弾され、罪を犯した本人以上に苦しみ、償う道を探し続けているのだろう。
しかし、なぜ、自身が罪を犯したわけでもなく、犯罪に加担してもいない加害者家族が責め立てられ苦しめられるのか。加害者家族を追い詰めるものは何か。阿部さんは、日本に根ざした「連帯責任」の考え方が大きいと話す。