ただし最新情報をアップデイトするという意味で、今回はよかったです。勉強のし直しです。歴史は新事実の発見の連続ですからね。
――伊東さんは、どうして北条氏が好きなのですか
さすがに専業なので好き嫌いでは仕事をしません。北条氏に鉱脈を発見したので、サーガ化するほど書き続けているのです。ここで言う鉱脈とは、誰も踏み入ったことのない未知の領域という意味です。
私がデビューした2007年当時、武田信玄や上杉謙信の小説は数多くあれど、北条氏を描いたメジャーな小説はほとんどありませんでした。せいぜい司馬遼太郎の『箱根の坂』(講談社文庫)くらいでした。北条五代の歴史は面白いので、「どうしてだろう」と思っていたくらいです。それで北条氏を基軸にして自分の領域を広げていこうと思いました。このあたりはコンサルタント時代に培った事業拡大計画と変わりません(笑)。
そんな経緯から、北条氏をサーガとして描き始め、その集大成的作品が『北条五代』になるわけです。今となっては、当初の構想をよくぞここまで成長させたと思います。
――伊東さんは多くの北条氏関連作品を手掛けてきましたが、どういう順で読むのがよいのでしょうか
今回、『北条五代』というサーガの基軸となる作品が上梓されたので、まずそれから読んでほしいですね。続いて五代の流れを掴んでほしいので、実録本の『戦国北条記』(PHP文芸文庫)をお読み下さい。「逆の方がいいんじゃないか」と思う方がいるかもしれませんが、さすがに最初から実録本はハードルが高いので、小説から入った方がよいと思います。
また実録本には、板嶋恒明氏と共著で『北条氏康 関東に王道楽土を築いた男』(PHP新書)もありますので、余裕があれば、そちらも目を通しておいて下さい。『戦国北条記』との重複はさほどありません。
続いて火坂さんの早雲像と私の早雲像の違いを知っていただくために、『黎明に起つ』と『疾き雲のごとく』(講談社文庫)をお読み下さい。『黎明に起つ』は早雲視点で描いた一代記、『疾き雲のごとく』は早雲にかかわった人物の視点から描いた連作短編集です。
それ以降は、時系列に沿って自由に読み進めればよいと思います。