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火坂雅志氏と伊東潤氏の共作による長編歴史小説『北条五代』が発売となった。NHK大河ドラマ原作ともなった『天地人』などで知られる火坂氏が、2015年に急逝したために未完となった作品を、伊東氏が引き継いで完結させたものである。
【北条家の家系図、北条家の家系図、伊東潤氏の北条サーガ全容図はこちらから】
亡くなった作家の未完作品を別の作家が書き継いで完成させるケースは極めて珍しい。最近では『屍者の帝国』(2012年、河出書房新社)が挙げられるぐらいだ。
『屍者の帝国』は2009年にガンで早逝した伊藤計劃氏が構想、冒頭の草稿を遺していた最後の作品で、その後を親友の円城塔氏が書き継いで完成させたものである。
『北条五代』は、初代・早雲から最後の第五代・氏直に至るまでの100年に及ぶ北条氏の興亡を描いた大河巨篇。北条氏五代に渉る歴史を描いた作品は、おそらく初めてだろう。
文芸評論家の菊池仁氏からは、
「火坂さんと伊東さんの執筆魂が宿ったような迫真の出来。これを快挙といわずして何を快挙というのか」
同じく末國善己氏からは、
「本作品には、日本の閉塞感を打ち破り、未来を切り開くためのメッセージに満ちている」
と、高い評価を得ている。
どんな思いで書かれたのか。伊東氏に執筆にいたる経緯と本作に込めた想いを聞くと、縦横に語りつくしてくれた。
* * *
――いよいよ大作『北条五代』が発刊されますね。まずは、今のお気持ちをお聞かせ下さい。
故火坂雅志氏の執筆開始から10年余、私が第二部を引き受けてから5年余という長いプロジェクトになりました。私の担当部分だけでも、これほど長い小説を書いたことがなかったので、まさに未知の領域でした。しかも火坂さんの後を引き継ぐというプレッシャーも相当ありました。
それでも何とか完成に漕ぎ着け、こうして発刊できることは無上の喜びです。手前味噌ですが、天の火坂さんも喜んでいるのではないかと思います。
この作品を機に歴史小説全体が脚光を浴び、火坂さんの諸作品も再評価されることを祈っています。