社会保険労務士の小泉正典さんが「今後いかにして、自分や家族を守っていけばいいのか」、主に社会保障の面から知っておくべき重要なお金の話をわかりやすくお伝えする連載の第17回。
今回のテーマは、2021年最初ということで、今年に法案審議が予想されるなど、近い将来に私たちに影響してくる社会保障について解説します。
■不妊治療の助成倍増、保険適用は既定路線
2021年最初の掲載ということで、20年から21年にかけて決定されたり、審議されたりする社会保障について、大きく流れを書いてみたいと思います。そこから「少子高齢化」についての政府の対応が見えてきます。
20年の後半になって、菅首相が「不妊治療」の保険適用や助成の拡大について言及したことがメディアで大きく取り上げられました。
不妊治療は、今でも一部の女性不妊、男性不妊の治療に対して健康保険の適用が認められていますが、体外受精や顕微授精などの「特定不妊治療」は自由診療となり、場合によっては総額で300万円を超えるような高額な費用負担を必要とします。
現在も保険のきかない特定不妊治療でも治療費の助成制度はあります。特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、極めて少ないと医師に診断された夫婦で、妻の年齢が43歳未満である、夫婦合算の所得が「730万円未満」など条件もありますが、まとめると以下のような内容です。
1. 特定不妊治療の費用に対して、1回の治療につき15万円(凍結胚移植などについては7.5万円)まで。通算助成回数は、初めて助成を受けた際の治療期間の初日における妻の年齢が40歳未満であるときは6回(40歳以上であるときは通算3回)まで。初回の治療に限り30万円まで助成。
2.特定不妊治療のうち精子を精巣または精巣上体から採取するための手術を行った場合は、「1.」のほか1回の治療につき15万円まで。初回の治療に限り30万円まで助成。(凍結胚移植などは除く)
※このほか、各自治体などで独自の助成制度を設けている場合もあります。例えば東京都は所得制限を905万円未満まで緩和、千葉県松戸市では別途1回7万5000円まで助成しています。