毎年、数多くの生徒を医学部に入学させている高校がある。なぜ、合格を勝ち取れるのか、どんな授業をしているのか。校長先生や進路指導部の先生に、取材をした。4日連続でお届けする第1回目は、開成高等学校だ。
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歓声が上がる! その声が一つの渦となって地面を揺るがす。開成高等学校の運動会における「棒倒し」は、代々受け継がれる競技の一つだ。
■規律を重んじて先輩・後輩の絆を培う
この運動会は毎年、母の日に開催されることでも知られ、中学1年から高校3年までの全生徒がクラスごとに縦割りで八つの色に分けられ競い合う。上級生が下級生を指導し「最高のパフォーマンスを見せる」ために、年齢の壁を越えて徹底的に話し合う。
例えば、棒倒しの戦略にしろ、その他の団体競技の戦略にしろ、色ごとに生徒間で代々伝授されており門外不出だ。
開成高等学校といえば有名大学への進学だけでなく、東京大学理IIIへの合格率が高い高校としてもその名が高い。野水勉校長は、こう話す。
「幅広くいろんな人材が育っており、多様な個性に恵まれた生徒が互いに
しのぎを削りながら成長していくのが開成の特色です。卒業生の多くが同級生や先輩・後輩と深く関わり合い、情報を共有したり連絡を取り合ったりもしています。そんな卒業生とのネットワークも誇りの一つです」
ある意味、規律を重んじながら先輩・後輩の絆が培われていく。
「開成にとっての運動会は、単なる体育祭ではありません。教育面においても貢献度の高い、学校全体のイベントです。ルール作りやけがの防止もすべて、生徒が主体となって実行し、教員は生徒を信じて見守っています」
先生から言われて作業するということではなく、生徒自らいろいろなイベントを作り上げる。修学旅行先も自分たちで決め、旅行会社と生徒が打ち合わせをするという。
■男子校の強みは、何だろうか
「入学したばかりの中学生にとって、高校生は大人のように見えます。運
動会だけでなく、日ごろから年上の先輩に多くのことを学ぶ機会があります。お手本が身近にあることで5年後の自分の姿だけでなく、未来の理想像が思い描けるのです」