見た目は立派ですが、質は見た目ほどいいとはお世辞にもいえません。1回でも洗濯・乾燥機にかけるとくたくたになるし、コットン100%と書いてあるものの長時間着けているとごわごわするし。形を保つため、鼻が当たる部分にワイヤーが入っている立体裁断型マスクがあるんですが、洗濯・乾燥機にかけるとそのワイヤーが曲がってしまい、着けると鼻が痛くてたまらない。わたしの日本人顔がマスクにフィットしないから? いえ、彫りの深いアメリカ人も同じ文句を言っているので、悪いのは顔ではなくマスクのはずです。

 アメリカ人の見た目重視精神が発揮されているのは、マスクだけではありません。日々のあらゆるものがそうなんです。たとえば、食べもの。仮にあなたがケーキ屋さんだったとしましょう。自社のチーズケーキをさらに魅力的に進化させるとしたら、一体どんな改良を加えますか?

 日本だったら、「北海道産の生乳のみを使用」とか「口の中で雪のようにふわっと溶けるスフレ風に」など、原材料や食感などの質を向上させるでしょう。それがアメリカだと、「キャラメルソースをかける」「チョコレートでコーティングする」「衣をつけて揚げる」「生クリームとスプリンクルを雪山のように盛る」など、見た目を豪華にする方に向かうのです。

 子どもグッズもそうです。通学バッグなどが顕著な例ですが、とにかくピカピカキラキラしていて、流行りのキャラクターが付いていて、周りに覚えてもらえそうなものがベター。日本のように「小学校6年間、毎日同じものを使う」という概念がないことも大きいですが、質を追求する日本のランドセルとはまるで別の方向を見ています。

 アメリカ人の目に、日本人の姿はこう映るのかもしれません。「みんな同じようなマスクを着けて、同じようなチーズケーキを食べて、同じようなカバンを背負って学校に通って、日本人ってなんてつまらない国民だろう」と。でも、我々は知っています。同じように見える商品でも、質はそれぞれ違うのだということを。

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◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi

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