旧動燃の元総務部次長・西村成生氏が残した極秘資料「西村ファイル」。“原子力ムラ”の暗部にかかわる仕事に従事させられていた西村氏は、すでに謎の死を遂げている。ジャーナリストの今西憲之氏と週刊朝日取材班が独自入手した資料には、原子力ムラが仕掛けた「組織ぐるみ選挙」の動かぬ証拠が記されていた。
1993年の衆院選、茨城1区からは3人の自民党候補が出馬した。後に財務大臣などを歴任し、現在は派閥の領袖となった額賀福志郎衆院議員と、葉梨信行氏(現在は政界引退)、中山利生氏(04年に他界)である。
この選挙区でも「組総ぐるみ選挙」を示す資科が確認された。93年7月1日作成の(マル選 状況報告)は、選挙戦の途中経過の報告だ。そこに、こう書かれていた。
〈取引業者については安推協、及び調達課・工務課が中心となり年間取引額500万円以上198社に協力要請中である〉
大口の取引先を中心に、自民党候補への投票を呼びかけていたのだ。ここにある「安推協」とは、動燃の下で働く業者でつくる「安全推進協議会」のこと。
資料の中には、50社以上の社名や連絡先が書かれた一覧表もあった。従業員に東海村在住者がいる企業のリストだという。それぞれ契約高や従業員数、動燃内に派遣している従業員の人数も記載されていた。
「安推協は、動燃から仕事をもらっている業者の集まり。原発関連からガソリンスタンド、書店まで、ここに名前がないと動燃では仕事ができない。契約高を書いているのは、企業への圧力のため。『仕事がほしければ、言うことを聞け』という意味ですよ」(動燃関係者)
地元有数の大企業である動燃からの「協力要請」を断れる業者があるだろうか。
※週刊朝日 2013年3月29日号