トイレのウォシュレット機能が大好きという、俳優で演出家の河原雅彦氏。ある俳優がウォシュレットの設定を『強』にしている理由を知り、驚いたという。

*  *  *

 ウォシュレットと言えば、あまりの水の勢いに思わず声を上げつつ便座から腰を浮かしてしまった経験ないですか?「あうっ!!?」って。そういう時って、十中八九、水勢の目盛りが『強』になってるのな。どんだけお尻が汚れてるんスか、『強』使う人って? あんな突き刺さるほどの水勢いらないです、ヒト科のお尻には。自分的にはそんなハプニングを“日常に隠された小さなトラップ”と位置づけし観念してますけど、本来、お尻を守るはずのウォシュレットが、一つ間違えれば凶器にもなりえるのですな。と、そんな話をとある知り合いの舞台俳優さんにしたところ、「それってイタズラされたんだよ」と真顔で言われまして。なんでもその人は、稽古場のウォシュレットの水勢をこっそり全部『強』に設定しとくんだと。で、反りの合わない演出家や共演者がトイレの中で「あうっ!!?」ってなったのを想像してストレス解消してるんだと。陰険……あまりに陰険過ぎやしませんか? つか、いたずらとしては地味MAX! でも、破壊力はまあまあ効果抜群! もうね、関係ない人のお尻にまで攻撃が及ぶわけだから、それって完全にテロ行為っス。なので、その俳優さんはトイレに入ると、まず水勢が『強』になっていないか必ずチェックするんだって。仕返しされやしないか心配で。ほとんどノイローゼじゃん。自分で自分の首を絞めてどうすんの?

 なにはともあれ、未来永劫、快適なトイレットライフを送りたいものですよ、腹の底から。

週刊朝日 2013年3月29日号