宇野勝は名古屋を愛している。現役時代から40年以上の“関係”を持つ街への思いは、強くストレートだ。自らの経験を踏まえ、現在の中日ドラゴンズについて、そしてファンとの思い出などを幅広く語ってもらった。
【写真】今オフに古巣である中日に復帰したベテラン選手はこの人
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――昨シーズンを振り返って
宇野:開幕前、このメンバーなら良い勝負をする、展開次第では優勝もあると思った。攻守ともに充実していたから、まさか巨人とあそこまで離れると思わなかった。巨人は(原)辰徳がうまくやった。開幕延期など難しい年だったからこそ、監督の差が出た。経験を重ね、辰徳は良い監督になった。日本シリーズでは負けたけど、長丁場のシーズンで結果を残すのが凄い。
――現在の中日の戦い方について
宇野:個人的な意見だけど、年間を通じて戦い方に魅力がない。例えば、塁に出たらいつもバントをする印象で面白くない。『形がある』とも言えるが、勝ててないから説得力もない。本当に大事なところなら(バントも)納得する。でも年間通じて同じで、終盤でも同様だった。あれだけ首位とゲーム差がついていたのに、Aクラスに入れそうだからバントが増えた印象もある。首脳陣の考えと、周囲が求めている野球が違うんじゃないかな。
――中日ファンの気質、常に勝利を求める?
宇野:中日ファンはチームを思う気持ちが強い。その思いが逆に出てしまう時もあり、考えが2つに分かれてしまったりする。昨年も前半戦の戦いを見て、『与田監督ではダメだ』と騒ぐ人が出た。黙って見守る人もいる。またマスコミや財界も騒ぐ。1つになってないから、全体が良い方向へ行かない。根本では勝利を求めている。でも人間はわがままな部分もあって、新鮮味がなくなると飽きも出始める。落合(博満)監督の時には、強かったけど客が減った。マスコミなどは『面白くないから減っている』と煽る。『俺らにどうしろと?」という感じだった。
――ファンを球場に呼ぶために必要なことは?
宇野:僕が現役時代の中日は、特徴ある選手が並んでいた。時代というだけでなく、チームの方針、編成の問題もある。チームカラーを作れば、ファンも戻って来る。3連覇時の広島は色が出ていた。出塁したら、決まって送りバントするのを見たいのか? それがチームカラー? 昔の川相昌弘さん(元巨人、中日)や平野謙さん(元中日、西武)のような、突出したバント技術で記録を作る選手ならお金を取れる。でも今の選手の中で、送りバントでお金を取れるものはいない。勝つためには必要な作戦だけど、お客さんが見たい面白い野球ではない。