例えば4話。渡し船失敗後、2人が「キス」について話すシーン。「こんなお似合いなカップルは愛の不時着でしか見られない」と入る。うん、うんとうなずき進むと8話、セリがジョンヒョクをわざと追い返すシーンで「この2人を幸せにしてあげて」。13話、セリの誕生日のシーンに「ペアリングをはめた日……」。14話、入院したセリにジョンヒョクが傷を見せるシーンでは「ドゥリカップルは本当に仲良し」。次第にジョンヒョク&セリなんだか、ヒョンビン&ソン・イェジンなんだかがわからなくなって、うれしい混乱。

 スイスでの最終話では、ヒョンビンが四つ葉のクローバーを見つけるオフショット。そこから2人が花束を持つシーン。「ドゥリカップルのスモールウェディング」「字幕は不要」「ドゥリカップルの幸せな日」を読むうち、現実みたいでうっとりする。

■また緊急事態宣言下

 マイおすすめナンバー1映像を紹介するなら、スタジオ撮影オールアップの瞬間。ヒョンビンが左手でソン・イェジンの左肩をポンポンポンと叩く。「お疲れさま」なのだけど、それ以上のドキドキ感が伝わってくる。超胸キュン。まるで自分の隣にヒョンビンがいるような錯覚、否、妄想さえしてしまった。

 ヒョンビンと出会ったのは、最初の緊急事態宣言下だった。息苦しさから逃げたくて、「愛の不時着」を見まくった。そして、2度目の緊急事態宣言下に始まったこの展示。何という偶然だろうとあれこれ考える。

 そう、ジョンヒョクには、こんな台詞があった。「僕が言ったろ? 偶然じゃなくて運命だと」

(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2021年1月25日号

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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