林:矢内さんは東日本大震災のとき、いちはやく「チームスマイル」というボランティア活動を始められて、被災地をはじめとする各地にライブ会場をつくったりとかなさいました。

矢内:僕自身が福島県いわき市の生まれですからね。僕の家も取り壊しちゃいましたし、僕の友人たちで被災した人がたくさんいましたし、その意味でリアリティーはずいぶんありましたよね。

林:3.11のあと、矢内さんが私に「僕の母校の磐城高校に講演に行ってよ」とおっしゃって、私、名門磐城高校に行ったんです。そしたら「このおばさん誰だよ」って感じで、誰も私の話なんか聞きゃしないんです(笑)。だけど、東京から一緒に行った講談社の女性編集者だけが感動してくれて、「今日の話を本にしましょう」と言って、それが『野心のすすめ』になって、かなり売れたんです。だから矢内さんには感謝しなきゃいけなくて……。

矢内:いやいや、こちらこそ。それにしても、新年早々こんな暗い話でよかったんですかねえ(笑)。こんなときだけど、エンターテインメントの力を信じて、明るい方向に持っていけたらいいですね。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

矢内廣(やない・ひろし)/1950年、福島県いわき市生まれ。72年、中央大学在学中にアルバイト仲間とともに雑誌「ぴあ」を創刊。74年、ぴあ株式会社を設立し代表取締役社長に就任。84年、オンラインによる日本初のチケット販売サービス「チケットぴあ」をスタート。オリンピックなど世界規模のイベントのチケット販売も多数手掛ける。また、77年から「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」の開催を続けるなど、文化支援活動にも力を注ぐ。2003年、東証1部上場。一般社団法人日本雑誌協会常務理事、公益財団法人ユニジャパン評議員、公益財団法人新国立劇場運営財団評議員なども務める。

週刊朝日  2021年1月29日号より抜粋

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