矢内:新国立劇場は10月からフルキャパで入れてます。このあいだ劇団四季が劇場を新しくオープンしたので、「オペラ座の怪人」を久しぶりに上演して、僕は初日に行ったんだけれども、これもフルキャパで入れてました。幕間にみんなロビーに出てきて、「こんなにお客さんが入ってるのは久しぶりだな」「やっぱりいいねえ」って、あっちでもこっちでも口々に言ってましたよ。
林:矢内さんご自身のこともお聞きしたいんですが、矢内さんは大学生のころに「ぴあ」を創刊したんですよね。「ぴあ」は日本の若者に大きな影響を与えましたけど、休刊になってどのぐらいですか。
矢内:休刊は2011年だから、今年でちょうど10年ですね。
林:私、最後の号、まだ持ってますよ。「ぴあ」という名前はずっと残って、「チケットぴあ」とか、「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」とか、矢内さんご自身も渡辺晋賞を受賞されたり、ほんとに素晴らしいです。
矢内:ありがとうございます。
林:「ぴあフィルムフェスティバル」は、今年で何回目ですか。
矢内:43回ですね。映画監督になりたいと思ってる人が自分で撮った作品をPFFに応募するんですが、毎年500本ぐらい応募があるんです。応募者は学生が中心ですが、そこから十数本の作品が選ばれて、グランプリとか準グランプリを出してきたわけです。さらに、入賞した監督たちの中から一人だけ選ばれて、上限で3千万円のスカラシップ(奨学金)が与えられて、次の映画をつくる権利を持つんです。つまり、新しい才能を発掘するコンペティションと、スカラシップで育成するという二つのことをやってきました。このシステムで現在、百四十数名のプロの映画監督が生まれてるんです。
林:去年、さらに新しい賞もできたんですよね。
矢内:ええ。さらにその先、世界に羽ばたこうとする日本の若い映画監督の背中を押してあげようということで、去年、「大島渚賞」というのをつくったんです。審査委員長は坂本龍一さんが引き受けてくれて、小田香さんという女性の監督が受賞したんですけど、このコロナの時代にまた新しい表現が出てくるのかなと思って、僕は期待してるんです。