新型コロナウイルスの影響を大きく受け、2020年の市場規模が前年比8割減となったライブ・エンタメ業界。ぴあ創業者で社長の矢内廣さんは、作家・林真理子さんとの対談でこれからの希望を語った。
>>【前編/Go To イベントは5万円でたった2千円の還元!? ぴあ社長の危機感】より続く
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林:こういうときにあって「鬼滅の刃」だけは異常なヒットで、「千と千尋の神隠し」の興行収入を抜きましたが、「鬼滅」がエンタメ業界にもたらした効果ってすごくあるみたいですね。
矢内:あれがヒットした背景の一つには、このコロナでハリウッドなんかの大型作品が軒並み公開延期になったこともあると思います。それと今、ほとんどの劇場はシネコンになって、通常ならそれぞれのスクリーンで別々の作品をかけるんだけど、今回は複数のスクリーンで「鬼滅の刃」をかけてるんですよ。だから上映回数が多くなっちゃうんです。
林:なるほど、そういうことなんですね。
矢内:もちろん作品自体が強くなければ、上映機会が増えてもお客さんは入らないんだけど、今回はその両方が重なったんですね。
林:あれがもたらしてくれたコミックマネーが出版界に流れ込んで、コミック誌を持っている出版社はウキウキしてますよ。
矢内:でも、ライブ・エンタメ業界は、まったくそういう状況じゃないです。
林:明るい兆しはないですか。
矢内:これからの話になりますけど、生のコンサートを見たいという強い欲求がどんどん膨れてきていることは間違いないので、入場者からお金をもらえない分をライブのネット配信で補填しようという動きが現実に出てきています。コロナがどこかのタイミングで落ち着いて、ライブのコンサートが元のように復活しても、ライブ配信が一緒に行われることになるかもしれません。
林:ほう、なるほど。
矢内:地方でのライブのコンサートは、採算性がもともとあまりよくないんですけど、コロナになってますますその状況が顕著になって、ひょっとしたら、コロナが落ち着いても地方のコンサートは減るかもしれない。その分、ライブ配信が多くなっていく可能性は十分ありますよね。自分が好きなアーティストをどうしても見たい、聴きたいという気持ちが、そうさせるんだと思います。