※写真はイメージです (GettyImages)
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2021年に早期・希望退職を実施する主な上場企業 (週刊朝日2021年1月29日号より)
2021年に早期・希望退職を実施する主な上場企業 (週刊朝日2021年1月29日号より)

 新型コロナウイルスによる業績悪化から、早期退職を募る企業が相次いでいる。人事コンサルティング会社「ベクトル」によると、労働人口が多いのはいまの40代だが、企業では50代が非常にだぶついていて、処遇しづらくて重い存在になっているという。

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 同社の小林豪副社長は次のように解説する。

「企業が早期退職で狙っているのは50代で、ミスマッチな人は外に出てほしいと思っている。過去に50代を絞り切っていると40代を対象にやらざるを得ない企業もあります」

 退職後も何かしらの仕事を続けるのであれば、在職中から早めに転職活動をしたほうがいいとアドバイスする。大手の早期退職では、再就職支援会社による支援を受けられることが多いものの、「転職活動をしない人が結構います。辞めて少しゆっくりしたいという人は、失敗することが多い」(小林氏)。

 大手銀行や官庁などではもともと、早期退職のような慣例がある。

「大手行員は平均52歳前後で早期退職を迫られます。同期の中で役員が出たら、それ以外の人間はじゃまになるので出向させるのです」。取引先だった関西のメーカーに再就職したメガバンク出身の50代の男性は、こう振り返る。行員時代に身につけた財務などの専門知識を生かし、「65歳までいまの仕事を続けたい」と語る。居心地のいい「第二の人生」を歩めるこうした“勝ち組”は必ずしも多くはない。

 企業を取り巻く環境は近年、デジタル技術を駆使するDX(デジタルトランスフォーメーション)などで大きく変化している。中高年の再就職市場では、たとえ大企業の社員としてキャリアや知識が豊富であっても、DX時代に対応できる新たな技能を身につけていなければ、見向きもされにくい。

 小林氏は警告する。「大手に勤めていた人はプライドも高い。ある程度の収入をもらって中小へ再就職したのはいいけれども、大手のやり方をそのまま持ち込んでうまくいかず、さらに転職することになった事例がある」

 早期退職は決して、バラ色の暮らしが約束されているわけでない。自らの人生設計にしっかりと向き合って、決断してほしい。

週刊朝日  2021年1月29日号より抜粋