長州には気持ちでは負けたくないとか、後れを取りたくないとか、引退したレスラーの中ではライバル視している人だ。逆に言えば、長州が元気だったら俺も元気でいなきゃいけないって気持ちだよ。

 スタン・ハンセンもそうだけど、昔ガンガン戦った相手が元気にしていると俺も頑張ろうって思える、戦友みたいなもんだね。ハンセンとは最近はコロナ禍で会えていないけど、以前は来日するたびに会っていた。プロレスで悪くなったところは手術で全部直したって。ハンセンは現役時代に稼いだ金を貯蓄と資産運用に回してね、うまくやっているよ。現役時代はブルーザー・ブロディと2人で株の新聞をよくチェックしていてね。俺たちが遊んでばかりいると、ハンセンとブロディに「この職業は長く続けられないから、ちゃんと計画立ててやらないとダメだぞ」ってよく言われたもんだ。やっぱり大学を出ている奴は違うよ(笑)。

 他に同世代だと藤原喜明さんはいまだに現役で、さらに絵をかいたり、盆栽や陶芸をしたりと多趣味でうらやましいね。俺も引退してからは趣味を持ったらとよく言われるが、今さら他の人に遅れをとった状態で始めるのも癪(しゃく)だしなぁ。ゴルフを勧められたけど「プロレスラーだから300ヤードくらい飛ばすだろう」っていう期待の目で見られている中で、チョロっと転がしたくらいになって、それ以来やっていない。女房がボウリング好きで連れて行かれるけど、これも「天龍だったら豪快にピンをぶっ飛ばすんじゃないか」という期待の中でガターを連発でやる気が起きない。映画も見始めてつまらないと思ったら、途中で映画館を出るし「なんだあの映画は。つまらないのに金を払って損した」と文句を言っている方が楽しいくらいだ。やっぱり、相撲と一緒ですぐに勝敗がわかる競馬が一番だな(笑)。

 最後に、今の現役のプロレスラーについてだが、先日、全日本プロレスの試合を見たけど、みんなすごくいい試合をしていたね。ちょうど、その前の週の「週刊プロレス」で全日本の文句を言ってしまって訂正しなきゃと思っていたところだったから、この連載があってよかったよ(笑)。特に宮原健斗と青柳優馬はよかった。俺が脊椎管狭窄症(せきついかんきょうさくしょう)手術から復帰を目指してトレーニングしていたころの若手が、みんな上手になっていてうれしかったよ。ただ、宮原! 師匠の佐々木健介と北斗晶に似たのか、パフォーマンスが少ししつこいぞ!(笑)

 そのほか、真霜拳號、火野裕士はインディー団体の選手だけど、見た目やからだつきはスター性があっていい選手だ。いろいろな団体に出てもっと自分自身を磨いてほしい。そうしたらもっと高みに行けるぞ。今はみんな大変な時期だけど、プロレス人生はあっという間だ、頑張れ!

(構成・高橋ダイスケ)

天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

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