現役監督ではないが、言葉の力、雄弁者、カリスマ性という点では、2014年途中から約5年間に渡ってジュビロ磐田を率いた名波浩元監督は外せない。現役時代から背番号10を付けてゲームを支配してきた男は、監督としても理論的かつ気概のある采配で、J2で停滞していたチームをJ1に昇格させ、さらに2017年にはリーグ戦6位にまで押し上げた。最後は成績低迷の責任を取る形で辞任し、会見の最後に「勝たせる監督ではなかったな、と。そこが自分の今後の課題だなと思っています」と語ったが、選手とのコミュニケーション能力、モチベーターとしての力は日本人監督の中では随一。W杯や海外でのプレー経験がある点もプラスで、メディアとの付き合い方を熟知している点も含め、監督としてのその手腕は代表チームでこそ発揮されるタイプ。近い将来、監督としてJリーグの舞台に戻ってくることはもちろんだが、ゆくゆくは代表で指揮を振るう姿を見てみたい男の一人だ。

 今後を見据えると、ガンバ大阪を率いて2年半が経過した宮本恒靖監督も有力候補になる。現役時代から主将としてリーダーシップを発揮し、2000年シドニー五輪、2002年、2006年のW杯出場の実績を持つ。指導者としては2016年にガンバ大阪のユースからU-23でJ3を戦った後、トップチームの監督となってからも優れた戦術眼と類稀な統率力を発揮。昨季はリーグ2位の好成績を収めて、J1の優秀監督にも選出された。守備戦術の構築はお手の物。攻撃面の引き出しを増やすことが課題になるが、その頭脳明晰ぶりと語学力、ピッチ脇に立った時の見栄えの良さは、国際舞台にこそ相応しい。他国の名将と並んで立った際にも、我々日本人が劣等感を感じることもない。「A代表=その国の顔」という意味も含めて、宮本ジャパンは是非とも見てみたい。本人も将来的なA代表監督就任へ意欲を見せており、どこかのタイミングで必ず「その日」が来るだろう。

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