


KCIAトップによる朴正熙・韓国大統領暗殺事件を描いた映画が公開された。情報工作などは実際にあったことで、工作機関としての姿は今も引き継がれているという。AERA 2021年2月1日号では、KCIAについて取り上げた。
【写真】イ・ビョンホンがKCIAのトップを演じる映画「KCIA 南山の部長たち」
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1979年に韓国で起きた朴正熙(パクチョンヒ)大統領暗殺事件を扱った映画「KCIA 南山の部長たち」(ウ・ミンホ監督)が22日、日本で封切られた。南山とは、かつて韓国中央情報部(KCIA)の本部が置かれた場所。韓国の人々は当時、情報工作と政治弾圧によって朴政権を支えるKCIAを南山と呼んで恐れた。映画では、イ・ビョンホンが演じるKCIAのトップ(南山の部長)が、権力の走狗となりはてた我が身を呪い、最後に大統領を射殺するまでの心の葛藤を描いていく。
ウ監督は「世界のどこにでもある、権力を取り巻く人々を巡る対立や葛藤に興味を持ってほしい。KCIAは権力の召使となり、我が身を滅ぼした」と語る。映画は暗殺事件を素材にしたフィクションだが、劇中で出てくるKCIAによる盗聴や尾行、拉致、拷問などは、実際に起きた事実でもある。
劇中では、KCIAの部長と大統領が日本語で会話する場面が出てくる。ウ監督は「朴正熙らが日本の教育を受けたのは史実だ。日本語も当然使うだろうと考えた」と語る。
■日本を舞台に活動も
そして、実際、KCIAとその後身である国家安全企画部、国家情報院は、現在に至るまで、日本を舞台に情報・工作活動を続け、あるいは韓国で暮らす日本人に対する防諜(ぼうちょう)工作を繰り広げてきた。
東京の韓国大使館にはKCIA要員が送り込まれてきた。要員は情報班と工作班に分かれる。情報班は、情報収集が目的で日本政府や財界、メディアに至るまで幅広く接触を図る。逆に工作班は、秘密の活動が主だから公に姿を現すことはない。日本の情報畑の人々のなかには、情報班をホワイト、工作班をブラックと呼ぶ人もいる。