新型コロナウイルスの感染拡大で医療従事者の疲弊度は増し、看護師が相次いで離職して社会問題化している。労働環境の改善は必須だ。一方で、新たに看護師を育てる大学などの養成機関は、どう奮闘しているのだろうか。国家試験合格者数ランキングを紹介する。
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日本看護協会(日看協)は昨年12月22日の記者会見で、新型コロナ感染症の患者を受け入れた病院の2割で看護師の離職があったという調査結果を公表した。
福井トシ子会長は、次のように危機感を募らせた。
「これまでで最大の波がきている現在、看護職員の心身の疲労もピークを迎えている」
「使命感だけではすでに限界に近づいていると言っても過言ではない」
2月7日の期限で出された緊急事態宣言は、3月7日まで延長されることになった。看護職から離れる人がさらに増えれば、深刻な人材不足となる。看護師養成機関(大学、短大、専門学校など)が送り出す新人看護師への期待が大きくなる。
看護師をめざす場合、これまで短大、専門学校に進むケースが多かった。だが、2000年代に入ってから、4年制大学へ進学するケースが増えている。これは後述するように、4年制大学に看護師養成課程(学部、学科、専攻など)が急増したことによる。
看護師が多く輩出する大学はどこだろうか。
国家試験合格者数1位の順天堂大医療看護学部では、1年時から勉強と生活面をフォローするため、アドバイザー制を設けている(1グループ約10人)。日頃から六つの付属病院で行われる実習、通常の授業を大事にするよう指導している。植木純・医療看護学部長は、こう話す。
「実習での経験が、国家試験で出題される問題をイメージしやすくし、判断を求められるような、比較的難しい問題に強い学生を育てることにつながっていると感じます。また、付属病院には看護師や助産師など卒業生が多く存在し、学生の良き相談相手、モデルになっています。こうした環境は学習へのモチベーションの刺激につながると考えます。学生の将来像が可視化しやすいわけです」
20年度はコロナ禍で、例年のような実習を実施するのは難しかったが、一定数を確保できた。それでも、学生は看護現場がイメージしにくくなるため、どのように展開したらいいのか戸惑ったという。植木学部長は、こう語る。
「授業資料や動画から作成したシミュレーションを通して、学生の知識をつなげる工夫をしました。オンラインで付属病院の看護師が教育に参加して臨床の判断の仕方を学生に教えたり、学生がさまざまな施設関係者と直接会話したりなど、学生にとっては大きなインパクトになりました」
最近の学生について、こう見ている。
「どうしても看護師になりたいというより、職業選択の一つとして看護師を志望する学生が増えました。これから社会が多様化する、人も価値観も多様性を帯びるなか、さまざまな考え方を持った看護師が多くなるのは良いことだと思います」
順天堂大医療看護学部の看護師国家試験合格率は98.1%である。最近5年間の合格率平均は99%となっており、16年以降、99.5%→99.0%→100%→98.0%→98.1%と推移している。