看護師養成機関の大学のみの国家試験合格率は95.0%(短大、専門学校などを含めた全体では89.2%)。合格率100%の大学が44校あり、看護業界では受かってあたりまえと見られている。ところが、昨今、合格率で苦戦する大学が見られる。

 東京都内の大学病院の看護師長は、次のように語る。

「大学ならば、最低でも合格率90%はほしい。それ以下は厳しいですね。看護師のレベルは出身大学と関係ないので、合格率が低いところはがんばってほしい」

 残念ながら、90%以下は34校に上った。80%に達していなかった大学は10校あった。東北文化学園大、日本保健医療大、三育学院大、聖徳大、松蔭大、中京学院大、明治国際医療大、広島都市学園大、広島文化学園大、宇部フロンティア大である。このうち2校は66%だった。

 合格率で苦戦するところは、新設の看護系学部でいくつか見られる。

 ここから、少子化対策としての大学経営戦略が見てとれる。これまで文、生活科学、国際系などの学部で構成された大学が定員割れを起こして先行きが厳しい。そこで、経営コンサルタントから、「看護学部は将来性があり、いつでも学生は集まる」という指南を受け、看護学部設置に踏み切った大学が少なくなかった。それは数字にも示されている。

 文部科学省の調べによると、看護師養成課程を持つ大学は1991年11校、01年89校、11年194校、20年276校と右肩上がりを続けている。全大学の看護師養成課程の入学定員は91年に558人だったのが、18年には2万3667人まで増えた。

 関東地方の私立大学で看護学部設置に関わった職員は、こう話す。

「看護バブルです。実習先となる病院、看護実務を教える教員を確保しなければ、大学設置基準に通らないので、かなり無理をした。それでも実習先、教員を十分に整備できなかった大学があり、これらは苦戦しています。国家試験合格率の低さが高校に伝われば、選ばれなくなるので、どの大学も必死です」

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