少数民族サイドから見た今回のクーデターは、NLDが選挙で圧勝したことへの国軍の危機感ではなく、国軍自体の弱体化が要因と映るようだ。
国軍は最高の意志決定機関である連邦行政評議会のメンバー16人のなかに、6人の少数民族を加えた。少数民族をとり込んでNLDに対抗しようとしている。
「NLDは、国軍は弱体化し、クーデターを起こせないと読んでいたんじゃないかと思います。国軍はいま、少数民族に近づこうとしているのかもしれないけど、私たち少数民族は、NLDも嫌いですが、国軍はもっと嫌い」
ラカイン族のTさん(36)はいう。
少数民族から見たミャンマー情勢は、報道されている以上に危うい。
■下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「沖縄の離島旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)。